ゆるゆると柔らかな弾力を返す唇に舌を這わせる。寂しさを誤魔化すためにただ重ねるだけのつもりだった口づけは、しかしその先を知っている身では到底満足しきれるものではなかった。 顎にそっと手を添えて、ゆっくりと丁寧に口を開かせると切島はそのまま自身の舌を爆豪の口内へと侵入させた。温かい爆豪の舌先に、同じく舌先で触れる。しかし、それでも反応は返ってこず、切島はそのままさらに深く舌を絡めた。 ぬるりとした爆豪の舌は意識がないせいか、普段と比べるととても柔らかな感触をしていた。なんだかそれが珍しくて、切島は何度も何度もその柔らかな舌を撫であげた。 「ん……、ぅ」 「ッ、……!」 その時だ、ふいに鼻から抜けるような微かな声がして、切島ははっとした。 初めての反応らしき反応。目が覚めたのかと慌てて唇を離し、爆豪を見る。しかし爆豪の瞼が開くことはなかった。聞こえてくる呼吸音も深いまま。どうやら切島の口づけに無意識のままに反応を返しただけのようだ。 なぁんだ。切島はがっかりと肩を落とす。しかし、その一方で腹の下のほうがざわりざわりとするのを切島は感じた。覚えのある感覚だ。それはもうこれでもかというほど覚えのある。 「…………、」 じ、と爆豪を見つめる。その唇は好き勝手に舐めついたせいか、赤くてらてらと艶やかだ。あぁ、と切島は息を吐いた。そしてすぐに、魅かれるがままもう一度その唇に己の唇を重ねた。ふたたび、柔らかな感触。これだけでも十分に気持ちがいい。だが、その感触を楽しむのはほんの少しに、切島はすぐに爆豪の口内に舌を差し入れた。 「ん、ん……んぅ……」 くちゅり、くちゅり、と食むよう口づけながら舌を絡ませる。そのたびに爆豪からは息を吐くような小さな声が上がるが、眠っている爆豪からの抵抗はない。それをいいことに切島は爆豪の後頭部に手を回し自身のほうへ引き寄せると、より深く深く舌を差し入れた。 爆豪の舌を根元からぐっと抑えつけ、そのままゆるゆると自身の唾液を流し込む。そうすれば、しばらくしてこくりと爆豪の喉が動いて、切島の唾液が嚥下されていく。 「は、ぁ……」 唇を離した切島は、大きく息をついた。その瞬間、腹の底の感覚がさらに増す。わかっている。されるがままに切島のものを飲みこんだそれはただの身体の反射的反応で、そこに爆豪の意思はない。だが、わかってはいても柔順なその様に興奮を覚えずにはいられなかった。 よくできましたと言わんばかりに、切島は爆豪の頬をそっと撫でた。爆豪の頬はその気性の荒い性格に反して驚くほどすべらかな感触している。撫でるとするりと手のひらに吸いついて、きゅ、と指先で突けば確かな弾力で押し返してくる。 色白なこともあってまるで赤ちゃんのようなもちもち肌。爆豪はそんな日に焼けない柔らかな自分の肌をあまり好いていないようだったが、切島は触り心地の良い爆豪の肌をとても好いていた。 爆豪の頬をさらに撫でる。たまにくすぐるように目尻を撫でれば、んん、とむずがるような声があがる。そのくせ、眠ったまま身じろぎをする爆豪は切島の手から逃げるのではなく、逆にもっとなでろと言わんばかりに頬を押しつけてきた。あぁ、もう、たまらない。 「……無理、我慢できねぇ」 名残惜しかったが、身を突き抜けるような衝動に切島は爆豪の頬から手を離した。ベッドに腰掛けていた状態から、爆豪を跨ぐように体制を変える。当然、爆豪に体重の一部だって乗せないよう慎重に。 首を挟むようにして膝をつき、爆豪を見おろす。切島が壁になって、爆豪の顔に影がかかる。その寝顔は変わらず穏やかだ。いっそ憎らしいほどに。 切島は爆豪の顔を見つめたままズボンのベルトに手をかけた。極力、音を出さないよう静かにベルトを外してズボンを下ろすと、下着をずらし中から自分のものを取りだした。今初めて触れたそれは、しかしすでにもう固く芯を持っている。 「…………」 深呼吸を一つ。ちょっとだけ。ちょっとだけならいいよな。一人で言い訳しながら、切島は欲望のままに熱く脈打つ自身の先をそっと爆豪の頬に擦りつけた。 「ッ……、は」 途端、なんとも言えない快感が切島の全身をめぐった。血液がぐわっと沸騰し、びりびりと手足の先までしびれるような快感。最高に気持ちがいい。 正直なところ、刺激だけで言えばそれはそう強いものではなかった。ただ擦りつけただけだ。爆豪に手で扱いてもらった時や、懇願しまくって咥えてもらった時に比べたら、微々たるものでしかない。しかし、意識のない爆豪にこんな行為を働いているという背徳感がこの小さな刺激を大きな快感へと変えた。 「や、っべェ……っ」 想像以上の快感だった。たったそれだけで、一気にぐんと硬度が増すほどに。 ぐぅぅ、と切島は喉を鳴らした。そして、しゅ、しゅ、と己の手で自身を根元から扱きながら、亀頭をふたたび爆豪の頬へと擦りつける。何度も何度も。先走りが溢れて白い肌を濡らす。さらに強くなる背徳感。連動するように快感は増していく。 「っ爆豪、爆豪……ッ!」 はっ、はっ、はっ、と息を荒げながら切島は扱く手を速めた。ぐにぐにと亀頭をさらに擦りつけて、そのたび切島のものは硬度を増していく。 「爆豪っ、くぅ、出すぞ……!」 絶頂は驚くほどあっという間だった。ぐぅ、と呻るように告げてから、切島は欲望のままに射精した。ぱたぱたと吐きだした精液が爆豪の顔にかかる。勢いよく飛び出たそれは額の辺りにまで飛びかかり、そのまま眉間を伝い、鼻筋を伝い、頬へとどろりと垂れた。 「これでも、起きねぇとかっ……、やべぇだろ爆豪っ」 射精直後だというのに興奮はまるで治まる気配がなかった。むしろ、なにも知らない寝顔のまま、白濁に汚れる爆豪に興奮は増すばかりだった。えろい。すっげぇえろい。 はぁはぁと息を荒げたまま、切島はしばらくのあいだ汚れた爆豪の顔を見つめていた。そしてふいに、はっ、と思いついた。脱いだズボンのポケットから携帯を取りだす。カメラを起動させて眠る爆豪へと向けると、そのまま、ぱしゃりと一枚。いけないことだとわかっていたが、あまりのえろさに堪えきることはできなかった。悪い爆豪。謝りながらも切島はいそいそと画像を保存した。 (爆豪とできない日のおかずにしよう……) はぁ〜、と恍惚のため息を一つこぼしてから、切島は爆豪にかかった精液を拭う。 「ぅん、ん」 「う、ひ……っ!?」 その時、爆豪の身体が大きく動いた。切島はばっと反射的に両手をあげて万歳をした。まだなにを言われたわけでもないのに、すでに全面降伏である。 しかし、爆豪は目を覚ましたわけではなく、ただ寝返りをうっただけのようだ。仰向けの状態から横向きへと体制を変え、もぞもぞとしばらく身じろぎをくり返していたが、いくらもしないうちにまた寝息が聞こえてきた。 「っっっ、はぁ〜……」 安堵に大きく息をつく。 「起きねぇってことは、まだいいってこと、だよな……」 都合のよすぎる持論をかかげながら、切島はそっと爆豪のズボンに手をかけた。自分の時以上に慎重な手つきでベルトとチャックを外し、ファスナーを下ろす。深い眠りについたままの爆豪は、腰を持ちあげられ下着ごとズボンを引き抜かれても気がつかない。 色白な体質の影響か、爆豪のそこは切島のものと比べると薄い色素をしていた。同じであるはずなのに、けれど、まるで違う爆豪のものに切島は初めて見たわけでもないのに思わずごくりと生唾を飲みこんだ。無意識に手が伸びる。 「ん〜……む、ぅ」 だが、その直前にまたしても爆豪が寝返りをうった。今度は横向きから、うつ伏せに。枕にぎゅうと顔をうずめてくぅくぅと寝息をたてる。切島に無防備に尻を向けながら……。 でへ〜、と切島はだらしなく表情を緩めた。 「っ、なに、やっぱ爆豪は後ろのほうが好きかぁ?」 親父臭い台詞。普段なら確実に爆豪から一撃食らうところだ。 しかし、今この場に切島を咎めるものはいない。 切島は、まずは爆豪の腰へとその手を伸ばした。するりと腰を撫で、そのまま滑らせるようにして尻を撫でる。きゅ、と引き締まった固くも弾力のある尻。満足するまでその弾力を堪能してから、今度はその谷間へとそっと指を忍ばせる。そうすれば、ぷくりとした感触が指先に伝わった。 「んん……ん〜、」 爆豪が声をあげる。気にせず、くにくにと指先だけで揉むように弄る。そのたびに爆豪は、ん、ん、とさらに小さな声をあげた。むずがるような、それでいてどこか色の付いた声。だというのに、まだ爆豪は目を覚まさない。だから、まだまだ切島が止まることはない。 切島はベッドサイドにおいてあるチェストに手を伸ばした。一番下の引きだし。その奥のほうに仕舞われていたローションボトルを取りだすと、中身が十分に残っているそれを手のひらへと豪快に垂らした。ぐちゅりぐちゅりと馴染ませるように手のひらでかき混ぜる。そうしてじんわりと温かくなってきたのをしっかりと確認してから、ローションにまみれた指をふたたび爆豪のそこへと触れさせた。 「指、挿入れるぞ爆豪」 いつものように声をかけてから、つ、とゆっくりと指を進ませる。まずは一本。きついが、何度も切島を受け入れたことのあるそこはほんの少しの抵抗だけでそのまま切島の中指を飲みこんだ。 「っん」 く、ちゅりと音がなり、重ねるように爆豪が吐息を漏らす。こそばゆいその息に耳を澄ませながら切島はくちゅ、くちゅと何度も中指を入れては出し、入れては出しと挿入をくり返した。そのたびに狭い内壁はきゅうきゅうと指先に絡みついてきて、爆豪は小さく声をあげ続ける。おかげで切島の下腹部は重くなる一方だ。 はぁ、と気持ちを落ち着かせるように息を吐く。まだ、だ、まだまだだめだ。強く自分に言い聞かせながら、挿入する指を二本へと増やした。 何度もローションを足して滑りを良くしては、増やした二本の指で浅い部分を入念に解す。解すべきは奥よりも固い縁のほうだ。奥深いところに悪戯を仕掛けたくなる衝動を何回も何回も抑えて、狭いそこをひたすらぐにぐにと広げる。 「は、ぅ……、ふ、……ん」 ぐぱ、と二本の指を離すようにしてより縁を広げれば、赤く色づく内壁がうっすらと覗いた。そこに切島はさらにもう一本の指を加え、中をそっと撫で上げた。ぐちゅり。粘着質な音がして、爆豪の身体がふるりと震えた。 「ぁ、ん……、ん」 「もう少し、もう少しな、爆豪……っ」 なだめるように声をかけながらも、指は止めない。 そうしているうちに固く絞めつけてくるばかりだったそこは程よく切島の三本の指に絡みついてくるようになった。ぐ、と押し込めば柔順に受け入れ、逆に引き抜けば名残惜しそうにぎゅうぎゅうと指に絡みつく。あぁ、もうまったく、なんていやらしい。 そろそろいいだろうか。というか、もう本当に我慢がききそうにない。 切島はぺろりと唇を舐めながら指を引き抜き、爆豪の顔を見た。するとどうだろう。あどけなく眠っていたはずの爆豪の眉間に、いつの間にかきゅっとしわが寄せられていた。白いばかりだったはずの頬にうっすらと赤みが指している。もしかして……。そう思って、爆豪の腰をずらして股間を覗くと、触っていないはずの爆豪のものが緩やかにだが確かに反応していた。 「っは、寝ててもそんなに俺の指気持ち良かった? 爆豪」 なんだそれ。すっげぇえろい。ただでさえ凄いえろかったのに、まだこれ以上えろくなんの? はっ、はっ、はっ、と切島は自身の息がどんどん荒くなっていくのを自覚した。整えようと試みるが、うまくいかない。心臓が、ど、ど、ど、とその脈を速めていく。自分の身体であるのに、まるでコントロールが効かない。 切島は爆豪の身体をぐっと引き寄せると、そのまま両足を抱え大きく開かせた。爆豪はされるがまま、あられもない姿を切島に晒す。散々いじり倒した後孔が赤くぽってりと色づいて、どろどろとローションに濡れながら切島を誘っていた。 抗えるはずがない誘惑に後孔に先端をぴたりと宛がえば、爆豪のそこはきゅうきゅうと吸いつくように収縮をくり返す。まるで今にも奥までの挿入をねだるような動き。切島は強く奥歯を噛みしめた。 「っ……はぁ、」 そろそろと慎重に、ゆっくりと腰を進める。そうすれば十分に解された後孔はわずかな抵抗を見せながらも、ぐちゅり、とひときわ大きな音とともに切島を受け入れた。 「んぅう……んうッ」 「く、はっ、……」 亀頭部分まで押し進めて、一呼吸。全身が強張って仕方ない。あぁ〜、と声を出して力を抜こうとするが、だめだ。全然だめ。いや、だめなんてもんじゃない。もう耐えられない。本能と欲望が、ただでさえ焼け切れていた切島の理性を完全に食らう。 「爆豪ッ……!」 犯したい。爆豪を犯したい。ぐるぐると頭の中を完全に欲望が占め、切島は衝動のままに、ずんっ、と強く自身を押し込めた。 「あっ、んあァ……ッ!」 溶けてしまいそうなほどに熱い肉壁が切島を包み、それと同時に声があがった。今までで一番はっきりとした艶やかな声。力なく横たわっていたはずの爆豪の身体が、ぐっ、とのけ反り、背中が浮く。その身体はすぐにまた力をなくしてベッドに沈んだが、その頃には、ずっと閉じられっぱなしだった瞼が開かれ、夕日によく似た色の瞳が前髪の合間から覗いていた。 |
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