[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

 じりじりと迫ってくる切島に爆豪は思わず後ずさった。
 背中に嫌な汗が流れる。冗談じゃない、ふざんけよ。そんな思いを込めて爆豪は切島に向かって声を荒げた。
「っおい、まじでする気かよ!」
「仕方ねェだろ、そうしなきゃ出れねぇんだからよぉ」
「仕方ねェじゃねェよ! ふざけんな……!」
「嫌なんだってわかってる。俺だってこんな状況でするなんて嫌だ」
「だったら――っ」
「だからって、こんなところでむざむざ死ぬなんてのも嫌だ」
「っ、……ぐ、ぅ」
「そんでそれと同じくらいに俺は嫌だぞ。おめぇ以外のやつを抱くのも、おめぇが俺以外のやつに抱かれんのも、ぜってぇに嫌だ!」
「そん、なん……」
 それは爆豪だって一緒であった。切島以外のものに抱かれるのは当然のこと、切島が自分以外の誰かを抱くなど、そんなの嫌に決まっている。しかし、だからと言ってこの状況をすんなり受け入れることなどできるはずなく、爆豪はじりじりと後ずさりを続けた。
「だ、だったら、あの二人がヤればいいじゃねぇか、なんで俺たちが」
「そんなん無理だってわかってんだろ? あいつらは別に俺らみたいに付き合ってるわけじゃねぇんだから」
「ぐ、ぅ……」
「俺たちがするしかねぇんだよ。それが、この最低な状況での最善の選択なんだ」
 なぁ爆豪、と呼びかけながら切島が顔を寄せる。爆豪は避けるように身を引いたが、ついに背中に壁が当たってそれ以上距離を取ることはできなかった。
 切島の手が頬に触れて、親指の腹がくすぐるようにさらさらと撫でてくる。優しい手つきだ。こんな状況でさえなければ、うっとりと目を閉じたくなるほどに心地いい、唯一の手のひら。
「ッま、て……!」
「待たねェ」
「……っ」
 心の準備ができぬままに、切島は口づけてきた。
 頬を撫でていた手がするりと自然に後頭部に回って顔を固定される。さらに、もう片方の手で腰を引かれて爆豪は完全に切島にホールドされてしまった。
「ん、ぅ……、ぁ」
 するり、と舌先が口内に侵入してくる。頬を撫でられた時と同じように、くすぐるようにして内頬を舌先で撫でられて、爆豪は肩を揺らした。咄嗟に切島の胸に手を当てその身体を押し返そうとしたが、切島は離れなかった。
 実習や戦闘訓練における戦闘面では常に爆豪は切島を圧倒していたが、個性を使わぬ純粋な力勝負だけで言うとほんの少し、本当に少しだけだが切島に分があった。さらにいうと、いまの爆豪はなにをどうすべきか決めかねていることもあって、ぐいぐいと押してくる切島を振り払うことができないでいた。
「ふ、ぅぁ……、やぁ、め……んっ!」
「なぁ大丈夫だ、爆豪。おめぇはいつも通り俺に全部任せてくれればいいからよォ」
「け、ど……」
 ちらりと視線をやれば、切島の肩越しの鉄哲と物間の二人の背が見えた。
 二人ともこちらを見てはいない。けれど、すぐそこにいる。本当に、すぐ、そこに。この状況でいつものように切島に抱かれるなんて、そんなの……。
「っやっぱ、無理だろッ!」
 ぐわっ、とせりあがってくる羞恥心に爆豪は首を振った。
「わりぃけど我慢してくれ、爆豪」
 しかし切島が止まることはなかった。
 ぐ、と爆豪の身体を壁に押しつけ、のしかかるようにして自由を奪うと、やおら首筋に顔を寄せそのままがぶりと噛みついてきた。思わずびくりと肩を揺らせば、すぐになだめるようにして舌で舐めてくる。
 手が服越しに胸を撫で、さらに腹を撫でる。腹筋の凸凹をなぞり、そしてへその穴を指先でくすぐった。
「ぅ、く……っ」
 その瞬間、ぞわりとした感覚が背筋を走って、喉が鳴った。
「すぐ終わらせるから、な?」
「…………ぅ、ぁ」
「だから、ほら、ちょっと俺の指舐めて」
「ってめ、なに……、んぐ」
「だっていまローションねェからよぉ」
 そう言いながら切島は急に人差し指と中指を口内に突っ込んできたかとおもうとそのまま口内をぐるりと撫でまわした。
「んふ、ん……、んっ」
 舌を押さえられたかと思えば、ぐにぐにとマッサージでもするかのように緩く刺激を与えられて、意図せずにじわじわと口内に唾液が溢れた。その唾液に切島は念入りに指を絡める。一方で、もう片方の手は器用に爆豪のズボンのベルトを外していた。
 どんどんとことを進めていく切島に爆豪はんぐんぐと唸りながら、その指噛みちぎってやろうか、と思った。だが、所詮は思うだけに終わった。

 唾液で十分に濡らした指を切島は性急に爆豪の後孔に宛がった。口内をかき乱された息を整える間もなく、つぷり、と指先を挿入される。
「ん……、まだ、柔らけぇな」
「っ、」
「これなら、時間はかかんねぇな」
「ぅる、っさい!」
 もう何度となく身体を重ねてきたが、本来そういう使い方をするわけではない爆豪のそこはいつだって丁寧な切島の指先を必要としていた。だがしかし、じつはつい昨日も身体を交わらせたばかりだったそこはまだ少し柔らかいまま、ぐにぐにと揉むように押し込んでくる指先を根元の水かき部分まで素直に咥えていった。
「ぐぅ……、う、ん……っ、い、やだ、って言ってんだろ……っ!」
「じゃあ、爆豪はなんかいい案浮かんだのか?」
「それ、は……、ひ、ぅあっ!?」
 問いかけられて言葉に詰まれば、狙ったように指先が爆豪の弱いところを、ぐに、と押してきて、全身が盛大に跳ね上がった。ぎっ、とにらむが切島はそれくらいでは怯まない。
「ぅ、ぐぅ……、あ、ぐぅ」
 文句を言いたかったが、いま口を開くとさらに変な声が出てしまいそうで、爆豪は喉だけで唸った。
「なぁ、その……大丈夫か?」
 その時だった。若干意識の外にやりかけていた鉄哲が突然に声をかけてきた。
 ふいうちのように挟まれた声に爆豪は、ひゅっ、と息を飲んだ。その拍子に漏れそうになる声を、両手で口元を覆うことで抑える。
「あぁ、大丈夫だ」
「そうか……?」
「おう」
「その、よくわかんねぇけどよ、なんか手伝えることあったら言ってくれよな」
「あー……、おう、大丈夫。とにかく俺たちに任せてくれ」
「うむぅ、わかった」
 なにも答えられない爆豪に代わって、切島が答える。なんでもないような平然とした返事。しかし、それでいてその指はくちくちと爆豪の内部を撫で続けていた。
 一体どう言う神経をしているのか。
 信じられず、驚愕に目を見開けば、目があった切島はへらりと笑った。
 
 
 
◇  ◇  ◇
 
 
 
 爆豪は壁を背に座りこみ、口を押さえたままなにもできないでいた。
 中で、三本に増やされた指がばらばらに動かされる。かと思えば縁を伸ばすようにして指を広げられて反射的に足先がはねた。くちゅり、くちゅり、とちいさく水音が鳴る。
 二人にも聞こえているのだろうか。聞こえてしまっているのだろうか。
 そう思うと背筋だとかうなじだとかがぞわぞわとした。
「爆豪、そろそろ挿入れるぞ」
 ぬるり、と指が抜かれて、また違う意味で全身がぞわぞわとした。
 肩や足先がびくびくと勝手に跳ね続けてしまうよな、そんな感覚。耐えるように身を固めれば、その間に切島は爆豪のズボンと下着を完全に脱がせてきた。そして爆豪の両足を抱え、大きく開かせると後孔に立ち上がりきった自身を添える。
 熱く固い感触に、爆豪はひくりと震えた。ざわつきが下腹部に集中する。期待と不安に、どうしようもなく呼吸が乱れた。
「き、りしま……っ、まて、まて、このあほッ……!」
「わりぃ、爆豪」
「ま、て……ッ、つか、てめっ、ゴムは……っ」
「ない」
「なっ!? ふざけっ、んぁあ!!」
 爆豪は思わず口もとから両手をどけて切島の肩を押した。
 もう何度目かになる制止。だが、やはり切島が止まってくれることはなく、ぐぐ、と熱いそれが挿入される感覚に爆豪はきつく目をつぶった。ぎゅう、と手を握れば、切島のシャツにぐちゃぐちゃとしわがよる。
「あっ、んく……っ、あッ!」
「しぃ……、爆豪、もうちょい声、抑えて」
「む、り、言う、んぅ……、なっ、ぁ!」
「でも、ほら、鉄哲たちに聞こえちまうから」
「……っ!」
「ちょっ、爆豪、絞めすぎ……っ」
 はっ、と顔を上げれば、変わらずに二人の背中が見えて、反射的に全身に力が入った。
 締め付けられた切島は、く、と息を飲み、爆豪は爆豪で力を入れたことによってよりはっきりと感じとってしまった切島の熱に息を飲む。
 うまくできない呼吸に、胸やら頭やらがひどく苦しかった。けれど、苦しいだけではない。いっそ苦しいだけならばいいのに、切島から与えられる熱に素直に善がる自分の身体が憎らしい。
「ぁ、う……、ぃ、あだ……、やっぱり、いやだ、きりしまっ」
「爆豪……、我慢してくれ」
「むり、だ……、こん、なん、むり……ッ」
「ほら、俺だけに集中してろって」
「んんぅっ」
 無茶言うな! と言いたかったが、ぐぐぅ、とさらに身を進められて、うめくように喉を鳴らし、いやいやと首を横に振る。しかし、それでも切島は聞いてはくれなかった。いつもだったら爆豪がいやだと言えば、爆豪がその気になるまで辛抱強く付き合ってくれるはずであるのに……。

 それだけいまの状況が特殊なのだと、仕方がないことなのだと、爆豪も頭ではわかっていた。無茶苦茶な話だが、この空間から脱出するにはこれ以外に手はないのだろうとも、わかっていた。けれど、やはりどうしても現状を受け入れることはできずにいた。
 だって、そうだろう。同じ空間に、自分たち以外の誰かがいる状況でセックスをするなど、そんなの爆豪の常識の範囲外であった。男同士でなにをいまさら、とは思わない。そこだけはいろいろと特別だけれど、生憎とセックスに関しては極々平凡な性癖なのだ。少なくとも人に見られて喜んで興奮するようなタイプではない。
 だというのに、指よりもよほど太くそしてよほど熱い切島のそれはどんどんと爆豪の奥を開いていき、そのなんとも言えない感覚に抱えられた脚が意味もなく宙を蹴った。こんな状況でなんて、いやでいやで仕方がないはずなのに、切島の熱に慣れ切った身体は与えられる快感に容易く飲まれてしまう。
 ちぐはぐな心と身体の反応にひどく頭が混乱した。

「はっ、ぁ、ぅくっ! あ、ぅ……ぁっ!」
 奥まで熱が届く。かと思えば、すぐに切島は身を引き、そしてまた奥を突く。ゆるりゆるりとした律動。爆豪は切島の動きに合わせて、はぁっ、はぁっ、と荒く息を吐いた。
「ばくごう、大丈夫か?」
「ぅ、るさい……っ、く、ぅ……、やめっ」
「だーめ、いい加減観念しろって、ほんのちょっとの辛抱だから、さっ」
「ひゃっ、うあ!」
 さっ、と言い聞かせると同時に切島は爆豪の腰を引き寄せた。
 そのままゆっくりだった律動を早々に早いテンポへと変えてきて、爆豪は漏れそうになる声に唇を噛みしめた。いつも、やめろそれ、と注意されている声を堪えるときの爆豪の癖。
 けれど、今回ばかりはその注意が飛んでくることはなかった。早く済ませようとしているのか、それとも、切島は切島で言うほど余裕がないのか、性急にピストンをくり返され爆豪はさらに強く唇を噛む。
「ん、むぅっ、ぅぁっ、~~~っ、ぁ、んっ!」
 それでも、殺しきれない声がいくつも口からこぼれていった。
 力強く長いストロークで中をいっぱいに突かれて、そのたびに電流を流されたかのように全身に、びりっ、と快感が走る。
 思わず逃れるように身を引くが、すぐ後ろの壁に寄りかかっている状態でそれ以上後ずされるはずもなく、揺さぶられるがまま身体を震わせること以外にいまの爆豪にできることはなかった。

 ずちゅり、ずちゅり、と大きくなった水音が辺りに響く。さきほどよりも大きな音だ。きっと二人の耳にも届いていることだろう。そう思うと、どうしようもないほどに羞恥心が募るというのに、高められた熱は引いてくれる気配はない。
 むしろ、ぞわぞわと背筋を這う感覚に不思議と身体の震えが増した。
「あっ、ん……、うぅ、き、り、しまぁ……っ、きりしまぁ!」
「っはぁ、爆豪、ばくごう……ッ」
 いつもとどこか違うその感覚に、もがくように手を彷徨わせれば、すぐに切島の手が爆豪の手を掴んだ。そのまま背中に腕を回すように導かれ、爆豪はされるがままに背中に腕を回すと、ぎゅう、と強くシャツを握る。
「んぁああ……ッ!!」
 その瞬間、ずん、と一気に最奥を突かれ大きく声を上げてしまった。
 それを契機に、切島は爆豪の一番弱いところをピンポイントに何度も何度も突き上げてきて、そのたびに爆豪はびくりびくりと全身を跳ねさせた。
「あっ、あッ! や、ぁ……っ、き、いっ、しあァ!」
「ん、あと少し、あと少し、なッ、……爆豪ッ」
 はッ、と切島が荒く息を吐く。
 熱をたっぷりに含んだ息。あぁ、だめだ。爆豪は思った。それを聞いてしまったらだめだ。獰猛な獣のような荒々しいその息遣いを耳にしてしまったら、爆豪の意識はあっという間に絶頂にまで引っ張られてしまう。どくん、どくん、と心臓が爆発してしまいそうなほどに高鳴って、下腹がきゅうきゅうと切なく震える。
 いつもと比べて情緒もなにもあったもんじゃない、ただ絶頂に導き解放を促すばかりのあまりにも性急なセックスだというのに、そんなのまるで関係なかった。
「んあっ、あッ、く、あぁ、っん!」
「ばくごう、爆豪っ、イく? もうイくか?」
「うるさ、いッ、うる、さ、ぃあぁあッ……!!」
「ん、一緒にイこう、なっ、ばくごっ」
「ぁんッ!!」
 ばくごう、ばくごう、と何度も名前を呼びながら切島は、後ろだけの刺激で十分に勃起していた爆豪のものに指を絡ませてきた。
「あっ! あっ! ばかっ、きりしま……ッ! それっ、やめ……、ぁんっ!」
「は、ぁ……っ、ばくごうっ!」
「ひあ、んあぁああっ!!」
 ぐちゅり、と音がなる。前と後ろ、どちらのものかわからぬほどにぐちゅぐちゅと大きく、無茶苦茶に。爆豪は声を抑えるのも忘れ、その音に負けぬほどに大きく無茶苦茶に喘いだ。
 もう、まるで頭が回っていなかった。ひたすら感じるのは、切島から与えられる火傷しそうなほどの熱と意識が吹き飛んでしまいそうになるほどの快感。熱い。気持ちがいい。熱い。その熱をどうにかしたくて、爆豪は切島の首筋に強く額を押しつけた。
「ひッ、く、あぁッ、あぁああ――――ッ!!」
「ッ――!!」
 促すように熱を扱かれ、さらに最奥を突きあげられて爆豪は断続的に身体を震わせ吐精した。そして、一瞬遅れてから切島もまた爆豪の中で吐精し、放たれた熱に爆豪はさらに身体を震わせた。


「はっ、あ……、はぁ……、はぁ……、ぁ」
「はぁ、はぁ……」
 全力疾走をした後のように、二人はそろって途切れ途切れに息を吐いた。
 全身から力が抜けていって、ぐったりと壁に背中を預ければ、すぐに切島が首筋に顔を寄せて、ちゅ、ちゅ、と軽く口づけを落としてきた。労わるような、慰めるような優しい感触。爆豪は少しくすぐったいその感触に身をよじりながら、いつからかずっと閉じっぱなしだった目をゆっくりと開けた。

 熱が抜けきらずにふらふらする頭をゆっくりと持ちあげる。するとその途端に、ぱ、と目があった。こちらを見つめる双眸。しかしそれは、切島の赤い目では、ない。三白眼気味の黒く鋭い目。
 え、と思ったのは、たぶん一瞬のことだったと思う。こちらを見つめる三白眼。それは鉄哲の目であった。いつの間にかこちらをふり返っていたのだろうか。わからない。わからないが、わからないままに爆豪は鉄哲と目があったのだ。
 そう。目が、あって、しまった。
「っ~~~~~!!!」
 その意味を認識した瞬間、爆豪は、かぁああ、といままで以上の熱が顔に集まるのを感じた。
次→