03 『約束しよう、リヴァイ……』 ――――――――そう、誰かが言っていた。 今日はとても晴れた夏の空をしていたから、朝に干した洗濯物は夕方にはとてもよく乾いていた。手を伸ばして触れてみれば、さらり、とした心地のいい感触が手の平に伝わって、ほのかな香りが、ふわり、と鼻腔をくすぐる。柔軟剤の甘いような匂いと、太陽の日差しの匂い。リヴァイはこの匂いが好きだ。洗濯物が綺麗になったことと相まって、気分が良い。だから、洗濯物を畳むという行為も嫌いではなかった。 一つ一つ、皺が寄らないように丁寧に畳んでいく。量はそう多いものではなかったから、たいして時間もかからずに終わらせた。いつも家で畳んでいる五人分と比べてしまえば、いっそ物足りないほどでもある。そんな畳んだ洗濯物たちを几帳面に並べ置いて、リヴァイはふぅとため息を一つつく。 「にしても、お前も大概頑固っつーか、しつこい奴だなエレン」 『俺からしてみればリヴァイも十分頑固な奴だよっ!』 携帯電話を耳と肩の間に器用に挟んだまま、リヴァイは並べた洗濯物を端っこから順に手にして立ち上がった。タオルは洗面所の棚へ、衣服は寝室のクローゼットやタンスへと順番にしまっていく。靴下は上から二番目にある小さめの引き出しの左側。寝間着は一番下で、普段着はその一つ上と二つ上。 電話の向こうからは、もしもし?俺の話聞いてる!?と相変わらずうるさいエレンの声が聞こえたが、リヴァイは気にしない。てきぱきと手際よく洗濯物を終っていき、そしてすべての洗濯物をしまい終えると、一仕事終えた満足感に、よし、と頷いた。 「で、なんだ?」 携帯電話を手に持ち直して、改めて機械の向こうのエレンに向き直る。 『……やっぱり、聞いてなかったのか』 「違う、聞き流していただけだ」 『そっちの方がむしろ酷い!』 「冗談だ」 『リヴァイの冗談は冗談に聞こえないって!』 それは悪かったな、と返しながら、リビングに戻ってソファに腰掛け、そのまま上体を倒した。質の良い大きなソファは、リヴァイが横向きに寝そべって足を伸ばしてみても、爪先がはみ出すようなことにはならない。 騒がしいエレンの声をBGMに、窓の外を見る。時刻はとっくに夕方を過ぎているが、夏の空はまだ明るかった。雲の姿が微塵も見えなかったから、たぶん、明日もとてもよく晴れるだろうと、どうでもいいことを思う。 『……なぁ、リヴァイ』 ひとしきり騒いだ後、打って変わって控えめな声でエレンは呼びかけてきた。そろりそろり、とした萎縮した声。あまり、いい声ではないな、と思ったが、これを無視をするわけにはいかないだろう。 「…なんだ」 『その、さ。いい加減どこにいるかくらい教えてくれよ、もう三日だぞ?三日』 「……言われなくても、日数くらいわかってる」 それこそ、嫌ってくらいに自覚はある。 今日で三日が経った。あの男と出会って三日。 リヴァイはあの大きなベッドで三度の夜を終わらせて、そして三度の朝を迎えた。隣りには、当然のようにして暖かな温もりが一緒にあり、大きくて太い腕が、その硬い感触とはまるで違った優しさで全身を包み込んでくれる。 いつまでも微睡んでいたくなるような、そんな腕の中。それでも何とかして意識を浮上させて身じろぎをすれば、耳に飛び込んでくるのは、リヴァイ、と低く掠れた己の名前。重たい瞼をゆっくりゆっくりと持ち上げると、ぼやけた視界に一番に映るのは決まって青い空の色だ。 『おはよう、リヴァイ』 優しい声と優しい眼差し。起きるまで傍にいろと、寝ぼけた意識で発した一方的な懇願をエルヴィンはたったの一度も違えることなく叶えてくれていた。三日間、その朝すべてだ。文句を言うことはおろか、理由を問うこともしない。リヴァイが願ったから、エルヴィンは叶えてくれる。なぜ。どうして。その理由を、リヴァイは知らない。知りはしないが、しかしエルヴィンと過ごしたこの三日間は、リヴァイにとって何か特別のような三日間であった。 「…………、」 『リヴァイ?また無視か?また無視なのか!?』 エレンの声に、はっ、とする。気が付かないうちに、少しぼんやりしていたようだ。今度のは意図した無視ではなかったから、悪い、と素直に一言謝る。 『なぁ、もしかいてまだ怒ってるのか?俺のこと……』 「別に、怒ってはいねぇよ……」 それは本当だった。確かにあの時はエレンの態度に苛立ってついつい怒ってみせたりはしたが、エレンが何を思ってあんな態度を取ったのかは理解しているつもりだ。もとより、ぐちぐちと怒りを引きずるような性質ではないこともあって、エレンへの怒りなどとっくの昔に沈静化している。 『本当に?』 「あぁ」 『本当の本当にか?』 「あぁ、怒ってないっつってんだろ」 『じゃ、じゃあ!今どこにいるか――――』 「…………エレン」 『ぐっ、……わ、わかったよ、くそぉ』 意識して名前を呼んでみれば、エレンは大人しく引き下がった。とは言っても、内心ではきっとこれっぽっちもわかってなどいないに決まっているのだろうが。 三日の間、エレンは最低でも一日に一回、リヴァイの携帯に電話をかけてきた。元気にやっているか、困ったことがあったら一番に言えよ、とそんなことを言っては、恐る恐ると、しかし確かな執着を持ってリヴァイの居場所を聞き出そうとする。けれど、その度にリヴァイは言葉を濁し、話を逸らし、そして今のように苛立ちをちらつかせて問いを誤魔化し続けた。 三日経った今でも、不用意にエルヴィンの存在を明かすのは良くないと言う考えは変わってはいなかった。兄姉らには友達の家に、エレンには知り合いの家に泊まっているとだけ伝え、エルヴィンの名は誰にも教えてはいない。 一番はじめの電話で怒りをあらわにしておいたせいか、リヴァイの機嫌が悪くなりそうになると、エレンはそれ以上の追及をしようとはしなかった。しかし、エレンは大層あきらめの悪い男であった。今日はこれ以上居場所を聞き出せないとなると、その代わりにエレンは言うのだ。じゃあ、居場所はいいから明日一緒に遊ぼうぜ!と。海に行こう、映画でも見に行こう、図書館に行って宿題をしよう、とそんな風にリヴァイを誘う。 『じゃあ、その話は置いといてさ、明日!明日の花火大会、アルミン達と一緒に行こうぜ!』 そして今回もまた、エレンはリヴァイを誘った。海、映画、図書館ときて、今度は花火。 リヴァイの住む地域では、毎年この季節になると花火を上げる行事があった。大会と言っても、そう大きなものでもなかったが、リヴァイも小さい頃は兄姉らと一緒によく夜空に咲き誇る大輪の花を見上げたものだ。年を追うごとに残念ながら都合が合わなくて家族とともに見ることは少なくなっていったが、それでも、どぉん、どぉん、と大地をも揺るがすような爆音をリヴァイは毎年必ず耳にしている。 すっかり忘れていたが、明日はちょうどその花火大会の日だ。 『今年の花火大会は凄いらしいぜ!なんでもヤタイ?とかいうやつがいっぱい出て、マツリって言う東洋風のイベントをするらしいんだ』 アルミンから聞いたんだ、とエレンは興奮を隠し切れぬ声で言う。彼は海好きであると同時に、異文化好きでもある。そのことをよく知るリヴァイには、電話越しのエレンが浮かべる表情が容易に想像することができた。きっと、お気に入りのおもちゃを前にした犬のような表情を浮かべているに決まっている。 しかし、それが容易に想像できてしまうだけに、リヴァイはそっと眉間の皺を深くさせた。誘ってくれるのは、素直に嬉しいと思う。あまり人が大勢来るようなイベントは好きじゃないが、行けばきっと楽しいのだろうとも思う。けど……。 「エレン、悪いが……、」 『……またダメ、か?』 「…………、」 返事に窮するが、逆にそれこそが答えも同然だった。 『もしかして、もう他の奴と約束してた、とか……』 「…いや、それはない」 この三日の間、エレンの誘いを受けることもなければ、他の誰かと遊びに行くことはなどなかった。それどころか、リヴァイは一度としてこの家から外には出てはいなかった。 別に、エルヴィンに外出を禁止されているとか、そんなことはない。エルヴィンはリヴァイの自由を拘束するようなことはもちろん、何かを強要しようとすらしない。先の洗濯物だって、リヴァイがそんなことをする必要はないんだよ、と言う彼の言葉を無視してリヴァイが勝手に取り込んでは勝手に畳んでいるに過ぎなかった。 出会ったあの瞬間から、エルヴィンはリヴァイの願いを優先してくれる。見返りを要求したりすることもない。きっと、リヴァイが友達と一緒に出掛けてくる、と話せば、エルヴィンはあの男前の顔に優しい表情を浮かべて、いってらっしゃい、と言ってくれるのだろう。 けれど、リヴァイはこの家を出るのが恐かった。 だって、そうだろう。 リヴァイはこの家には、ただ一時的に身を置いているだけだ。しかし、なぜこの家に身を置いているのか。その明確な理由を形にすることができていないリヴァイには、一度この家を出た後に、再びこの家に帰ってくる理由もまた明確な形にすることができないでいた。 理由がないのなら、この家に帰ることはできない。だって帰るべき場所は、本当ならばここではない。それがわかっているから、リヴァイは外に出ることができないでいた。リヴァイはまだこの家に居ていたい。エルヴィンの傍に。だから、エレンの誘いを受け入れることができない。 「今回は、お前たちだけで楽しんでこい」 『今回“は”じゃなくて今回“も”だろぉ……』 エレンの声には未練がありありと含み表れていた。それだけに一層申し訳なく思うが、だからと言ってどうしようもなかった。 『じゃあ、次だ!次こそは絶対にリヴァイも一緒に遊びに行くんだからな!』 「……行けたら、な」 約束だ!とエレンは声を大きくさせる。だが、そんなエレンの言葉にリヴァイは明確な返事はしなかった。安易に約束を交わして、結局は駄目でした、とがっかりさせるようなことはしたくない。 打ち明けてしまうなら本当は、いっそのこと諦めてくれればいいのに、と思っていたりする。そうすれば無駄に期待を持たせることもなければ、今日も駄目なのかとエレンに嫌な思いをさせることも、最初からない。 しかし、エレンはリヴァイを誘う。昨日も一昨日も断られて、そしてまた今日も断られ、いい加減、嫌になって誘うのを止めたっておかしくないはずなのに、エレンは“次こそは”はと言う。それをリヴァイは少し不思議に思う。 「……なぁ、エレン」 だから、気が付けば思わず口にしてしまっていた。 「そもそも、なんでお前は俺を誘うんだ?」 『へ?……な、なんでって、そりゃあ、リヴァイと一緒に行きたいからだよ』 「そうじゃない」 実は言うと前々から常々、疑問には思っていた。 なぜエレンはいつもいつも自分なんか構うのだろうか、と。 昼食は一緒に食べようだとか、組運動のペアは俺と組もうだとか、帰りも一緒に帰ろうだとか、何度となくエレンはリヴァイを構い続けてきた。それも、同クラスにリヴァイとなんかよりもよほど付き合いが長く仲も良い幼馴染が二人がいるにも関わらず、だ。 リヴァイは自身があまり愛想の良い性格をしていないことを自覚している。人付き合いも、面倒だからと積極的に行うことなく、排他的とまでは言わないが、きわめて受動的だ。きっと、エレンの方から声をかけてこなければ、ただの一クラスメイトとして最低限の言葉を交わすだけの関係のままに違いなかった。 けれど実際には、エレンは声をかけた。無愛想で近寄りがたかったであろうリヴァイに、声をかけた。それも、初めから妙に好意的な態度で。その態度に、リヴァイがつっけんどんな態度を返しても、今の今までエレンはリヴァイを構い続けてきた。 「初めて顔を合わせた時から、そうだ。お前は妙に俺に構ってきてたよな」 『そう、だったか……?』 「あぁ。ただ馴れ馴れしい奴かと思ったら、他の奴にはそうでもねぇし、なんでだ?なんでお前は俺に構う?」 『え、いや、なんで、って聞かれても……、』 どうやら今度はエレンの方が返事に窮する番だった。うんうん、と聞こえる唸り声に、リヴァイは黙ったまま耳を傾け続ける。 『そんなこと言われてもなぁ……、う〜ん、しいて言うなら、まぁ、その、直感?』 「直感?」 『フィーリング、っつーの?なんとなく、気が合うかなぁ、って思って?』 それは何とも煮え切らない答えだった。ふわふわとして明確な形のないその答えに、よくわからん、とリヴァイは首をかしげる。 『あっ、ほら!よくテレビの結婚報告とかで芸能人が言ってるだろ、出会った瞬間にビビッ!ときたってやつ』 「よく言ってる……か?」 『おぉ!よく言うよく言う』 「そう、か……」 『この間もさ、言ってたじゃん。ほら、なんだっけ?あの女優の名前……』 「知らん。俺に聞くな」 芸能人の結婚うんぬんに興味がなどなかったから、名前を聞かれてもわかるはずもなければ、話の内容自体もあまりぴんとはこなかった。だから、エレンの言うフィーリングとやらも結局はよくわからないままで、気が付けば徐々に話題はずれていってしまった。 しかし、きっとこれ以上聞いたところで明確な答えは返ってこないのだろうな、と理解できたリヴァイは別段それを修正しようとはせず、エレンの話に静かに相槌を返すにとどめた。 やがてどれほどの時間が経っただろうか。 エレンとの会話に時間などあまり意識していなかったリヴァイだったが、いっそ感心してしまうくらいに途切れぬエレンの声に混じって、がちゃり、と聞こえてきた音に、はっ、とした。聞き間違えようもないそれは、玄関の鍵が鳴った音である。そしてその音が聞こえたと言うことは、エルヴィンが帰ってきたと言うことであった。 リヴァイの意識に、時間という概念が急速に戻ってくる。時計を見ると、どうやら思いのほか長くエレンと話していたらしい。扉が開き、そして、ばたん、と閉じる音にリヴァイはソファから素早く身を起こす。 「悪いエレン、そろそろ切るぞ」 『えっ、…あ、そうか。もう、こんな時間か』 「あぁ、明日のことも悪いな」 『いや、まぁ残念だけど仕方ねぇよ……でも、次こそは俺も諦めないからな!』 名残惜しげなエレンの声に、またな、と声をかけてから、リヴァイは通話を終わらせた。そしてそのまま携帯を机に置くと、早く玄関に向かおうと急いでスリッパを履き直してソファから立ち上がった。けれど、リビングを出ようとして、既にすぐそこまで来ていたエルヴィンとぶつかりそうになって慌てて足を止める。 「エ、ルヴィンっ……」 「っと、あぁ、リヴァイ。ただいま、今帰ったよ」 「……あぁ」 おかえり、とは言うことはできなかった。そんな言葉を投げかけられるような、立場じゃないと思っていたから、口にすることはできなかった。可愛げない。自分でもつくづく思う。 しかし、そんな無愛想極まりない出迎えに、エルヴィンが嫌な顔をすることはない。それどころか、ぶつかりそうになったリヴァイに驚いたように目を丸くさせたのちに、すぐに仕事の疲れを感じさせない穏やかな表情を浮かべて、リヴァイの前髪を指先で撫でるように軽く払ってくる。 「不便はなかったか?」 あまつさえ、そう言ってこちらを気遣ってくる始末だ。ここで労われるべきは家に引き籠っていた自分ではなく、仕事をしてきた彼の方であるはずなのに。 この三日間、毎回そうだった。朝起きたらいつもすぐそばにいてくれるのと同じように、エルヴィンはただいまの後に決まってリヴァイを気にかける言葉を投げかけてくれた。不便はないか、昼食はちゃんと食べたか、妙なことなどなかったか、と。そしてリヴァイが何も問題などなかったと答えれば、それは良かった、と安堵したように頬を緩ませる。 「別に、大丈夫だ」 「そうか」 「あぁ」 今日も、エルヴィンはリヴァイの答えに変わらず頬を緩ませてみせた。細められた目は優しい色をしており、その色にリヴァイはひどく胸がざわつくのを感じた。それは、初めて出会った時にも感じた、あの感覚。 その感覚に、リヴァイは思い出した。ついさきほどまで離していたエレンとの会話。もしかして、この感覚が、そしてあの時感じたあの感覚が、エレンの言っていた“びびっときたフィーリング”と言うやつなのだろうか。たいして珍しくもなんともない、名前も知らない芸能人が言うような“よくある”こと。 それならば。だとしたら――――。 「…………っ、」 途端に、胸のざわつきが嫌な軋みに変わったような気がしてリヴァイは小さく頭を振ると、すぐにそれ以上の考えを無理やり隅っこの方へと押しやった。 ふっ、と静かに息を吐き出して、意識を切り替える。 リヴァイは俯きかけていた顔をすぐに上げると、エルヴィンの方へと手を伸ばし、そのまま彼が持っていた鞄を無造作に奪った。抵抗することなく、リヴァイの好きにさせるようにして鞄を明け渡したエルヴィンの顔は確かに仕事疲れこそは感じさせていなかったが、しかし暑さからかこめかみにじわりと汗がにじんでいる。 「鞄、部屋に置いとく……さっさとシャワー浴びてこい」 「あぁ、そうだな。そうさせてもらうよ」 言いながらエルヴィンはぽんぽんと労わるように頭を撫ぜてくる。子ども扱いはあまり好きではない。けれど、彼の大きな手の平に触れられることは嫌いではないから、リヴァイは眉間に少しの皺を寄せながらも、その手の平を容受する。 「服は、あとで置いておく」 「何から何まで悪いな」 「別に、こんなことぐらいで礼なんていらねぇから、ほら、さっさと行ってこい」 些細なことでも惜しみなく感謝の言葉を口にしながら、放っておけばいつまでも頭を撫でていそうなエルヴィンを、リヴァイはその巨体を無理やり反転させて止めさせた。片手は鞄でふさがっているから、もう片方の手だけで、ぐいぐいと背中を押す。だが、片手のせいか体格差のせいか、びくりともしない身体に少しむっとさせられた。 「じゃあ、いってくるよ」 エルヴィンはそんなリヴァイにまたしても微笑みを一つ零しながら、その場を後にした。 ふんっ、と鼻をならしてから、リヴァイもまた言った通りに鞄をエルヴィンの部屋に置いてくるためその場を後にしようとして、けれどその前にこっそりと廊下を振り返った。そして、風呂場に向かうエルヴィンの後ろ姿をもう一度確認した。 「…………、」 出会いはどうであれ、きっかけはなんであれ、すぐそこにエルヴィンはいる。 共に理由も意味も分からない。けれど、今、確かに傍にいる。 (ならば、それでいいんだ) (今は、それでいいんだ) (せめて、今だけは) (それで、いい) 言い聞かせるように、胸の内だけでリヴァイは呟いた。 |
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